「国宝大神社」展と「神社の伝統」

九博で開かれていた特別展の感想です。

*展示室内の画像は九州国立博物館より提供していただいたものです。

室内に入ると、まず富士山や夫婦岩などの写真がタペストリー仕立てで展示されていました。
絹垣に見立てた薄布ごしに見るようになっていたのですが、正直空き店舗のウィンドウディスプレイみたいだと思ってしまいました。←すみません[:汗:]。
神域をうまく表現しているとは思いましたが。
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紹介ゾーンとしてそれなりに成立していましたが、これだけのスペースが空いているのはもったいなかった。
そこを抜けると、山ノ神遺跡や沖ノ島の祭祀遺物などが展示です。
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古墳時代、拝殿も神殿もなく、まだ仏教もなかったころの祀りの有り様が伺えます。
鏡やミニチュアが捧げられている所などは、古墳や王墓の副葬品に通じるものを感じました。
御嶽(うたき)からの出土品にもびっくり。
第二尚氏時代の埋納品とのことですが、勾玉も埋納されていました。
ここはとてもよかったです。
今回の展示の根本となる思想が表れているコーナーだったと思います。
それからは、垂玉宮縁起絵を見たり、「国宝天神さま展」の時の展示品と再会したり、七支刀のレプリカをしげしげと眺めたりしながら会場を進みました。
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見えている御輿は手向山八幡宮の手害会で実際に使用されたものだそうです。
一条通をずうっと行って転害門に突き当たるあの通りを、この神輿も行ったのかと思うと感慨もひとしおでした。
おや、と思ったのは大坂住吉大社の面楯。南方系の感じがします。
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ベトナム展で見た鬼瓦に似ている、と思いました。13~14世紀のものだそうです。
熊野夫須美大神座像はさすがの迫力でした。
が、写真であっても載せるのが憚られるので略します。
(九州会場のポスターになっています。気になる方はそちらをご覧下さい。)
それよりも、私が気になったのはこちらの神像です。
こちらもちょっと載せるのが憚られるのですが、こういう機会は無いでしょうからご紹介。
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展示後半は、由緒ある神社の木像が圧巻でした。
何か畏れ多くて、こんな風にみていいものかハラハラし通しでしたけれど。
(絹垣を巡らすなら、パネルにではなくこちらの方にこそではないかと思いました。)
熊野速玉大社・松尾大社・高野神社といった、錚錚たる古社の神像を見ることが出来るなんてもうないかもしれませんね。
貴重な体験でした。
話は変わりまして。
関連イベントの「神社の伝統」を見に行きましたので、そちらの感想も書いておきます。
祝おう 遊ぼう 神様と」のコピーの通り、2月1日の九博はとても楽しかったのです。
ホールは木の柱と注連縄で舞殿が拵えてあり、齋場らしい雰囲気が漂っていました。
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ここで、念願だった瀬高町大江天満神社の幸若舞も見ることが出来て大満足。
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大村神楽の「綱駈仙」(だったと思います)はその名の通り観客席の中を走る走る。子供が泣こうがお構いなしです。楽しかった。
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また、エントランスと続きになっていて、そちらは玉垣風なセッティングでした。
(画像はそこで行われていた北野天満宮風流)
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北野天満宮の子供達が可愛かったので、動画を少し切り出しました。5秒ほどですがご紹介。
↓ (お使いの環境によっては表示されないかもしれません。)

こうしてみると衣装や小道具が時代を反映していて興味深いです。
蜷城の獅子舞はシュロ、北野天満宮の風流では大人(男性)は裃でした。
豊前神楽では小道具に聴診器やアルミの脚立があったりして、そのあたりの自由さが面白かったです。
最後に、展示目録はよく確認しとこうねという話をちょっとだけ。
実は、開催前何かでこのチラシを見て、てっきり細見美術館の金銅春日神鹿が来ると思っていた私。
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これ、東博だけの展示だったのですね。七支刀も。
もう一度見られると思っていたので、それが残念でした。

「尾張 徳川家の至宝」展と「煎茶」と「山の神々」

少し前になりますが、九博の特別展を見てきました。
個人的に印象に残ったものについての感想です。

*展示室内の画像は九州国立博物館より提供していただいたものです。

名古屋の徳川美術館には何度か行きまして、茶器など見たいものは既に見ていました。
それで、今回の展示では近世大名らしいものを探してみました。
すると目にとまったものがこれ。鉄砲と大筒です。
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「唐銅飛龍形百目大筒」は飾りが精巧で面白く、とても実戦用とは思えません。
実際に使えるのでしょうけれど、美術工芸品といった感じでした。
こちらの火縄銃にも美しい装飾が施されています。
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それから初音の調度。
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この「初音の調度」は、交流展示室に入れ替えられながら展示されていましたが、こうしてセットで見るとさらに豪華。
毎年お正月に見られるのが楽しみでしたが、揃ってしまった以上今後の展示はなくなるのでしょうね。
それを思うと寂しい気もします。
そして秋の九博と言えば、交流展示室恒例の「茶の湯を楽しむ」。
こちらも毎年楽しみにしているのですが、今年は意外や意外「煎茶」に関する展示でした。
煎茶の茶器にも名品があるのですね。
台北の故宮博物院に同じようなものがたくさんあったのを思い出しました。
(お茶の葉が違いますが、どちらもルーツは明ですからね。)
それから、交流展示室ではトピック展として「山の神々?九州の霊峰と神祇信仰?」が催されていました。
竈門神社肇祀1350年記念 ということで九州の山岳信仰に関する展示が行われていたのですが、これが意外と面白く、高良大社の画縁起まであったのにはびっくり。(展示は12/1まで。)
図録は持たない主義ですが、もう二度と無い機会かもしれませんので購入。


別会場の太宰府天満宮宝物殿の展示も見に行きましたが大満足でした。

「大ベトナム」展

九博で開催されている特別展の感想です。
個人的に印象に残ったものをご紹介。

*画像は九州国立博物館より提供していただいたものです。

まずは歴史をさかのぼったところから。
会場にはいると大きな銅鼓がお出迎え。
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前4世紀~前1世紀頃、北部に栄えたドンソン文化を代表する青銅器。
背後に見えているのは銅鼓上部を拡大した画像です。
「12」の光芒を持つ太陽が印象的でした。蛙の飾りも見えます。
祭器に蛙と来れば月でしょうか、それとも大地?
そんなことを思いながら進みました。
きれいな水色の、形が変わった耳飾り。
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ガラス製とのこと。
ドンソン文化と同時期に、中部地域に平行して存在していたサーフィン文化のものだそう。
玉やガラスを使った繊細な装飾品が特徴のようです。
これは知りませんでした。
この頃も、北と中部に出自の違う文化が同時に存在していたのですね。
時代は飛んで8-9世紀。
こんなものが。
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(獣面瓦)
どことなく、大宰府政庁跡から出土した鬼瓦に似てる気がしました。
この瓦はタンロン遺跡出土品ものだそう。
銘が入った?(*注)にもオヤ?
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「大越国軍城」とあるのは10世紀のものだそうですよ。
この「城」は都城の意味でいいのでしょうか。城塞でしょうか。
*注文字が表記されない方へ「セン」という字です。)
かと思えばヒンズーの神。
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ハノイを中心として王国が栄えていた頃、同時期に中部で栄えていたチャンパー王国のもの。
やはり北部と中部に出自の違う文化が存在していたのですね。
川から陸から海から、いろいろな文化がやってきて通り過ぎたことがわかります。
一番テンションがあがったのはこれ。
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バクダンジャン(白藤江)の戦いで元寇を破った罠。
まさか実物を見られるとは!!
(去年、鷹島沖海底で元寇の沈没船が発見された時、関連番組でベトナムの戦いを知って興味を持っていたのです。)
元による三度目の攻撃を日本が受けなかったのは、この戦いのおかげであったとか。
国境を接しているこの土地のこうした経験は、ずっと人々の意識に引き継がれていて、60年代のあの戦いでも…?と、そんなことを思いました。
南北はもちろんのこと、北部のさらに北の方とも西の山向こうとも平和でありますように。
阮朝のものは華麗で豪華。
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(金の板に文を彫り込んだ金冊)

(金冊を入れる銀製の箱)

(冕冠)
冕冠の龍の爪は5本。
中華帝国の皇帝かよっ!とツッコム。。。いえ、なんでもありません。
気概の表れというか、そういう意識だったのでしょう。
意外だったのは、航海図など朱印船貿易の資料がたくさん展示されていたこと。
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(アジア航海図)

(異国渡海朱印状)
青銅器や仏像、金銀細工などが中心かなと勝手に思っていたので、私としては意外だったのです。
でも、貿易と交流は今回の大きなテーマだったのですね。
異国渡海朱印状は、「日本より安南国に到る船なり」と書いてあるだけのシンプルなものでした。
誰かが真似して書いてもわからないのではないかと思いましたけれど、実際どうだったのでしょう。
それとベトナムが漢字文化圏であることを改めて認識。
話題になっていた、最古の安南国書簡もありましたよ。
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交易が盛んだったことの証拠、沈没船から引き上げられた陶磁器の数々。
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中央に見えているのは「青花鳳形水注」。
海中にあったため色褪せていますが、レベル高いです。
沈んでしまったとは、なんとももったいない話。
最後の民族衣装のコーナーでは、ハッとさせられました。
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色合いが雲南省の少数民族のものと似ています。
国土がつながっているんだなと実感。
50以上の少数民族がいるそうです。知りませんでした。
知らなかったベトナムに会え、知っていたことがより具体的になった一日でした。
4階の交流展示室では武雄の蘭学展をやっており、こちらも面白かったです。